■ガラスの器。再生への祈り
チェックアウトをしようとすると、昨日と違うフロントの方から「SRのお客さんですか?」と声をかけられます。彼もバイク乗りとの事。少し話を伺います。
町に戻ってきた人の為に、このいこいの村が出来たが、現実は住民が少なく、町外から来る工事関係者で成り立っている状態。
工事は道路・漁港の公共事業、世界最大級の水素製造工場建設。そして家屋の解体作業との事。
解体作業は町に戻る為の建て替えですか?と尋ねると「いえ、もう町に戻らない、引き払いの解体がほとんどです。」
「たまに、仕事でよそから来て泊まる人の中に、知った顔を見かけるんですよね。声をかけるんですけど、気まずそうで。もう違う町で新しい生活があるんですよね。」と少し寂しげな表情。
ご丁寧に玄関で見送って頂きました。感謝。
置き去りの大型ジープ。避難先には大き過ぎたのか?
海の方に向っていきましたが、走る車の多くがトラック。
真新しい漁港が整備されています。
遠くに見える大型の施設が水素製造工場のようです。
何か塀で囲まれた場所があるので行ってみます。
放射線量は低いようですが、まだ除去した土壌が残っています。
街中を走っていると先ほどの宿の方の話どおり、解体する家屋をよく見かけます。
公共工事・新設される巨大工場。そして人のいない町。何か、きれいなガラスの器のようなイメージが浮かびます。外見は奇麗ですが中味は空っぽ。
短い時間ですが、スーパーのスタッフ、昨晩のバスの運転手の女性の方、居酒屋の若主人、そして宿のバイク乗りの方。この町を愛し、この町に戻り、そしてこの町の未来を創ろうとする方々に出会い、浪江町の復興を願わずにはいられません。
元の住民の方が戻ってくるのを待つより、新しく町に来る人々により、浪江町は生まれ変わるのではないでしょうか。この町の再生を祈ります。