お酒の神様、バッカスが現れて、「一人でキャンプ。焚き火の前で、お前が一番旨いと思う酒は何かな?」と尋ねたら、私は何の酒を選ぶのだろうか。
■国を越えたバッティング。
雨が上がったので、テントに移動して焚き火開始。
ホー・ホーと鳥の鳴き声。
梟?船橋ですよ。
いきなり焚き火の炎が舞い上がります。
バッカス?
「その線香の煙は、いやな香りだな。消してくれぬか。」
確かにバッカスの声。少しイライラしている様子。
香取線香が苦手なの?
蚊取り線香を消すと期限が治ったようで
「今宵の酒は決まったかな?」
と聞く声はいつものバッカスの声。
第10回今宵飲むウイスキーは、『ニッカウィスキーセッション』
昨年の9月に発売されたモルトウィスキー。
この商品は、スコッチはハイランドのベンネヴィス蒸留所(ニッカ社所有)の他、スコッチのモルトと日本の余市・宮城峡のモルトをバッティングしています。
海外の原酒のブレンドでは、最近では、2019年4月にサントリーが5大ウィスキーの原酒をブレンドした「碧」を発売。
古くは1998年に発売されたキリンのロバートブラウンは、発売時から国産の原酒と輸入の原酒をブレンドしていました。
このセッションの特徴は、グレーンを使わない、ピュアモルト。
ブレンデッド・モルトである事。(注)
(注)シングルモルトは1つの蒸溜所の原酒の場合。
スコッチのモルトとジャパニーズモルトのセッションが名の由来だろう。
ニッカウィスキーセッション
タイプ :ブレンデッド・モルト
製造者 :ニッカウィスキー株式会社
では早速頂きます。
色 :色はやや薄め。明るい小麦色。
香り :トップはかなりフルーティ。オレンジや切りたてのりんごのような香り。
追いかけてバニラ香。
味わい :クリーミーだが、ここでいくつかの味わいが重なる。
ビター・香ばしさ。これがブレンデッド・モルト由来の味わい。
余韻 :ビターなチョコの味わいが残る中で、ピートの香りが抜けていく。
ここで余市がくるのか。
スコットランドはスペイサイド、エルギンの町にある古ぼけたバー。
奥のテーブルで、何人の老人たちがウィスキーを飲んでいる。
マスターに尋ねると、昔の仲間の再訪を祝っている。との事。
一人の老人が持参したウィスキーを皆にふるまっている。
その男が造ったウィスキーのようだ。
えっ、日本人。その横顔は、英国人の妻と日本にウィスキーを広めた男の顔。
ウィスキーは時間の壁をも超える旅をさせてくれる。
「どうだったかな?」バッカスの声が響く。
「美味しい。でも旨い酒には、単純に味だけでなく、どこで造った酒、背景が必要だと思う。」
「その意味では、輸入原酒のブレンド系は、ウィスキー探しの対象じゃない。」
ホー・ホー。梟の鳴き声のような笑い声。
「お前の酒探しじゃ。好きなように探せばいい。」
竹藪が揺れた。
バッカスの気配は無い。
続く。