お酒の神様、バッカスが現れて、「一人でキャンプ。焚き火の前で、お前が一番旨いと思う酒は何かな?」と尋ねたら、私は何の酒を選ぶのだろうか。
■送り火はLED
お盆は、全国で多くの豪雨被害。
私の住んでいるエリアでも土曜の深夜に携帯に緊急速報。
天気が悪くてキャンプにいけない事を嘆くような状況じゃない。
この後、8月は1回行ければいい方かな。
「送り火にLEDでは手抜きじゃないか。」
バッカスの目印にと、ランタンを点けていました。
「前も言ったけどご先祖様じゃないでしょ。」
「ウイスキー選びが進まないようじゃな。」今日は、あっさり話題を本題に戻した。
「別に納期のある仕事じゃないし。」私の応えには、少し不貞腐れたようなにおいがした。仕事が進まない事のあせりゆえか。
「あるよ。12月31日」バッカスはあっさり、まるで何回も言った話のように応えた。
「聞いてない。そもそもまだこの旅で飲んだのは、14本でしかない。この後12月まで考えても、そんなに飲めるものじゃない。」
「お前もサラリーマン人生長いだろ。納期の無い仕事をしたのか。この旅に出る時に、それを確認して、その中でベストの選択をすべきじゃないのか。」
「ぐうー」
「なんじゃその声は。」
「ぐうの音も出ないので、せめてぐうーと言っただけです。」
いい歳して、まるで先生に説教されている子供だ。
「いきなり1本を選ぼうとするから苦しいんじゃないのか?」
「でも、バッカスが、お前が一番旨いと思う酒。と訊ねたよね。」
「例えば、ギリシャの神は12人。12本のウィスキーを選んで、さらに、その頂点にゼウスのウイスキーを選ぶとかはどうじゃ。」
「それ完全にワイン漫画の『〇の雫』のパクリだね。」
「神か?」
「言うな。」
「十二使徒はキリスト教だから、我らよりかなり後だ。著作権的にも問題ない。」
著作権はともかく、確かに、いきなり1本を探し出そうとするから難しい。
「今年の年末に、お前が今年飲んだウィスキーの中で、何本かをチョイスすれば良いと思うぞ。」
「1本でなくても?」
「もちろんじゃ、毎年ごとに、最終決戦 の候補者を選べばよい。」
「最終決戦はいつ?決戦の候補者は何年で選べばいい?」
「物事には、全て納期がある。人にも期限がある。まず、お前がいつまでキャンプで焚き火が出来るかも問題じゃな。」
私の人間ドックの再検査、マーカーの値が上がっている事も知っているかのような、口ぶり。
「来週は、晴れれば良いな。ウィスキーは決まっておるか?」
LEDの光に送られて、バッカスの気配が消えた。
私のつぶやきは多分、バッカスには届かなかっただろう。
以上