お酒の神様、バッカスが現れて、「一人でキャンプ。焚き火の前で、お前が一番旨いと思う酒は何かな?」と尋ねたら、私は何の酒を選ぶのだろうか。
■妖精の国で怒る羊に出会う。
昼の暑さでどうなることか、と思っていたが、日が落ちるとかなり過ごしやすい。
それでも焚き火は暑いので、少し離れて眺めています。
でも何か変な気配。林の中がざわついた感じがする。
何かキャンパー以外の気配を感じる。
水回りも光り出した。まるでディズニーのパレード待ちのようだ。
バッカス?いや違う。彼の気配ではない。
まあ、とりあえずウィスキーを飲もう。
このへんのいい加減さが、おやじのおやじたる所以。
●第46回今宵飲むウィスキーは『SHEEP DIP』
羊の絵柄が印象的なブレンデッドモルト。
復活した、農夫により造られるウィスキー。
1970年代に生まれ、その後は忘れ去られていたウィスキーだが、近年、新しい味わいに生まれ変わった。
16種類のシングルモルトウィスキーが使用されており、8年物から21年物と異なった年齢の原酒をフレッシュ・アメリカンオークバレルでマリッジしている。
生産地:イギリス スコットランド
製造者:スペンサーフィールド・スピリッツ
色 :しっかりした琥珀色
香り :エステリーさ立った後、果実的な甘さが追いかけてくる。
香り立ちが良い。
味わい:柔らかで繊細。華やかさを感じる味わい。
余韻 :滑らかで強い余韻が長く続く。
余韻を楽しんでいると、焚き火の炎が燃え上がる。来た。
見上げると、流れ星?いや違う。もっと大きく、ゆっくり落下している。
何の光?
『おい。どうすんだよ。』
姿は見えないが、感じる。ギンガムチェックのシャツに茶色のパンツ。
顔はそう、先ほどボトルで見た顔。羊だ。
ここは、妖精の国だ。想えば何が出て来てもおかしくない。
少し怒っているようだが、何に怒っているのか分からない。
そもそも初対面だし。
「どうするって、何を?」声のする方に話しかけてみた。
『お前の人生。そして、バッカスの事』
声の感じからすると私よりたいぶ若いようだ。羊の年齢は知らないけど。
お前呼ばわりには、少しイラッとするが、心配してくれているようなので忘れよう。
『何にも決めていないよね。』また羊が言ってきた。
ふっと気になって聞いてみた。
「伊能忠敬先生のお使いの人?」昼間の佐原詣のせいかな?と気になったのです。
『誰だよ、そのイトウダダタカって』どうやら違うらしい。
この年になると、人に怒られる事もないので、なんでだか、小言を言われているのが、嬉しい。
「君の顔のラベルのウィスキーがあるんだけど、一緒に飲まないかい?」
続く。