お酒の神様、バッカスが現れて、「一人でキャンプ。焚き火の前で、お前が一番旨いと思う酒は何かな?」と尋ねたら、私は何の酒を選ぶのだろうか。
■まるで鏡のストーリー。
直火の焚き火はいい。
炎の揺めきに石の表情が変化する。
風が吹き、木々がゆれて、眠っていた鳥たちが飛び立つ。
何者かが降臨。
その声はSRの後ろの方から聞こえてくる。
最近、バッカスの姿は見えないが、気配は以前より強く感じるようになった。
「今宵の酒は決まったかな?」
確かにバッカスの声。
第8回今宵飲むウイスキーは、『ニッカウィスキー宮城峡』
竹鶴政孝は、余市とは違うウィスキーの個性を求めて、第二の蒸溜所を計画。
宮城峡を選び、この地を訪れた時、新川の清流で、持っていたブラックニッカを割って飲み、味わいを確認。
その場で蒸溜所建設を決定したと言われています。
またサントリーの2代目社長佐治恵三は、山崎蒸溜時と違う蒸溜所の場所を探しで、ウィスキーに適した水を求めて、山梨、南アルプス、白州の地を選びました。
山崎はスモーキーを抑え華やか、余市はスモーキー・重厚。
宮城峡は、軽やか・華やかを求め、白州はスモーキーさと厚み。
まるで鏡のようです。
蒸留所の造りも宮城峡は、蒸気方式。白州は余市のような直火を選ぶのです。
さて飲みましょう。
シングルモルトウィスキー宮城峡
産地 :日本・宮城峡蒸留所
タイプ :シングルモルト
製造者 :ニッカウィスキー株式会社
では早速頂きます。
香り :甘くフルーティ。りんご。熟した洋ナシのような香り。
ピート香は軽く、シェリー樽由来の甘い香り。
味わい :軽やか。華やか。口の中での柔らかな広がり。
余韻 :軽やかに抜ける華やかさ。余韻が長く続く。
川霧の立つ川辺を年老いた男が歩いている。
その足取りは、男の旅の終わりが近い事を予感させる。
一瞬、男のそばに寄りそう女性の姿が現れる。
幻。でも男も気づいたのか、その顔は微笑んでいる。
何か、女性の華やかさ、優しさを感じさせるウィスキー。
「どうだったかな?」バッカスの声が響く。
「旨い。まだまだ私の旅は長いよ。」
何か笑い声のように、木々が騒めいた後、静寂が戻った。
バッカスの気配は無い。
続く。