お酒の神様、バッカスが現れて、「一人でキャンプ。焚き火の前で、お前が一番旨いと思う酒は何かな?」と尋ねたら、私は何の酒を選ぶのだろうか。
■まっ白なのに黒なのか。
2月の3連休。日曜日に用事があったので、金曜日からキャンプの予定だったが、首都圏の天気予報は、木曜日から大雪。
最近の天気予報は当たるのでキャンプは中止。
バイクだと雪は無理です。
夜半過ぎに外を見るとシンシンと降る雪。
庭は真っ白。一面の雪景色。
●窓をノックする音
さて部屋でウィスキーでも飲んで寝るか。
コンコン。
閉めたばかりのガラス戸をノックする小さな音。
バッカスだ。前にも一度、我が家に来た事がある。
ガラス戸を開けて庭を見る。
ウッドデッキに足跡。その先には無い。舞い降りたのか。
「明日のキャンプは中止だと思っての。久しぶりの訪問じゃ。」
降りしきる雪の中、バッカスの声だけが響く。
「今宵のウイスキーは、決まったかな。」
●第26回今宵飲むウィスキーは『ブラックベルベット』
1950年代初頭リリースされた当時は「ブラックラベル」という名前だったが、そのなめらかな味わいから「ブラックベルベット」に改名された。
カナディアンウィスキーによくあるカクテルのベースとして飲まれる事が多いようだが、有名なカクテル「ブラックベルベット」はまったくの別物。
カクテルのブラックベルベットは、黒ビールとシャンパン(スパークリングワイン)を半々で割ったカクテル。
オリジナルは3年熟成のウィスキー。8年物のリザーブもある。
「バッカス。せっかくだから一緒に飲まないか。今夜は冷える。ホットウィスキーにしたよ。」
「頂こう。お互い歳だから、冷えるのは良くない。」
かなり歳の差はあるが、神と人間だから、そんなもんだろう。
頂きます。
産地 :カナダ アルバータ州
蒸留所:ブラックベルベット蒸留所 旧名 パリサー蒸留所
製造者:コンスタレーション・ブランズ社
色 :黄金色
香り :大麦の甘さ、ライ麦のスパイシーさ。
アルコール感を感じるが、かすかにキャラメルやナッツの香り。
味わい:熟成感の少ないすっきりさ。
余韻 :短く軽やかな心地よい余韻。
「アメリカじゃウィスキーをコーラやジンジャエールで割って、奇麗な姉ちゃん達が飲んどるだとよ。」酒場で一人の中年の男が言った。
「コーラで割ってウィスキーの味がするのかな。」隣の席の男が返した。
「ブラックベルベットもう1杯」蒸留所で働く若者の前に、グラスが置かれた。
「おかわり。もう少し濃いめがいいな。」バッカスの声に我に返る。
今夜は寒い。神に門限があるのか知らないが、温まるまで飲もう。
続く。