お酒の神様、バッカスが現れて、「一人でキャンプ。焚き火の前で、お前が一番旨いと思う酒は何かな?」と尋ねたら、私は何の酒を選ぶのだろうか。
■アウトドアシーンをストーリーとしたウィスキー
薪のはぜる音と小川のせせらぎ。
自然の中に溶け込んでいるような時間が流れる。
この闇の深さはなんだ。焚き火とランタンの灯りも闇に吸い込まれているようだ。
自分をこの世に引き戻すように頭を振り、スキットルに手をのばす。
ウィスキータイムの始まりだ。
●第45回今宵飲むウィスキーは『TINCUP』
このウィスキーは、ボトルにも刻まれているジェシー・グラバー氏が造る、アウトドアでの消費をイメージしたコンセプトウィスキー。
「ティンカップ」はロッキー山脈の西側に位置する古い鉱山の街の名前で、この街の名前は、当時の鉱夫たちがウイスキーを金属のカップで飲んでいた事に由来しています。
金属製のカップが付いているのも、その世界観をイメージしたもの。
またボトルには、ロッキー山脈の水を割り水にしている事や、標高約5,251フィート(約1,600メートル)の高地でボトリングされている事も刻まれています。
HPを見ても写真は全て山であり、アウトドア。
アメリカではこの製品の他に、ライ・10年。新製品として14年もののラインナップがあります。
製法 :インディアナ州で製造されたバーボンにコロラド州で蒸溜された
色 :琥珀色
香り :黒胡椒のスパイシーな香り。熟した果実の甘い香り。
味わい:バニラなテイストとスパイシーさ。
余韻 :厚みのある余韻だが、キレがある。
空気が冷たい。山の頂には雪が残っている。川の水を手ですくい、口に含む。冷たく、甘い。ふと気づくとかたわらに男が立っている。もう老年に入っていると思われるのだが、若々しく、エネルギッシュな感じだ。
『一杯やらないか?』男が差し出したティンカップを受け取ると、こぼれんばかりにウィスキーを注ぐ。
目が一気に飲め。と言っている。
その目に即されてあおると、のどが焼けるように・・いや、、そうでもない。
ワイルドだがどこか上品。紳士的である。
微笑んだ男の目が語っている。『どうだ。まずいウィスキーを飲むには人生は短すぎるだろ。』
さっきまで吹いていた風も止んだようだ。何故か、川のせせらぎの音も消えた。
静かな闇の中に、どんんどん深い闇の中に落ちていく。
そして、自分の存在も感じない。消えた。
続く